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空き家対策待ったなし!「ほったらかし」は通用しない!?

2023.08.01

放置された空家への取扱いが厳罰化されます!

令和5年6月14日「空家等対策の推進に関する特別措置法を改正する法律」が公布されました。同法は、令和5年中の施行が予定されています。

既に空家を所有している人、これから空家を所有する予定の人は要注意事項です。

1、制度の概要

現在日本では放置された空家が社会問題化しており、今後も増加する事が予想されています。放置され廃墟化した空家は、倒壊の危険性もあり、また周囲の住環境への悪影響など様々な問題をはらんでいます。

空家対策として、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。同法は、いわゆる廃墟化の防止や廃墟化した空家の除去等を定めたものでした。今回の改正案は同法をさらに強化するものです。増加し続ける空家に対して、行政が厳しく対処していく姿勢を打ち出した内容となっています。

2、ペナルティ対象となる「空家の範囲」の拡大と「罰則」の強化

今回の改正により空家は大きく分けて「空家」「管理不全空家」「特定空家」の3つに分類されることになります。(以前は「空家」「特定空家」だけでした。)

「空家」というのは、人は居住していないが基本的に清掃管理等の行き届いている状態の空家をさします。

「特定空家」というのは倒壊の危険性や衛生上著しく問題のある状態、著しく周囲の景観を損なっている状態の空家をさします。いわゆる「廃墟」のイメージです。

「管理不全空家」とは、現状において「特定空家」ではないが、このまま放置すれば「特定空家」化する状態の空家です。窓が割れているのにそのまま放置され続けている空家といったイメージです。

それぞれの状態に対する行政の取扱いは、次の通りです。

「(管理されている)空家」…特に処分はありません。

こちらに関しては、「管理不全空家」にならないよう、引き続き管理を継続してください。

 

「管理不全空家」…管理するように「指導・勧告」がなされます。

「指導」より「勧告」の方が、より厳しいものとなります。

管理を怠り続けると、いずれ「特定空家」になる可能性があります。

「勧告」を受けた場合は、土地の固定資産税が最大で6倍に増加します。(※住宅用地特例の解除)

※住宅用地特例の解除

 住宅の敷地として利用されている土地は、固定資産税が基本的に減額されています。(200㎡までは6分の1に減額。200㎡を超える部分も3分の1に減額)。この特例は、今までは「特定空家」以外の空家敷地にも適用されていましたが、今後は「管理不全空家」として「勧告」を受けると解除されます。

 

「特定空家」…「指導」「勧告」「命令」「(行政)代執行」「緊急代執行」

 特定空家に指定されると、除去等の「命令」が下されます。「命令」に違反した場合は、50万円以下の過料(罰金)の対象となります。さらに応じない場合は、行政が強制的に空家を除却する「代執行」処分となります。除却費用は所有者に請求され、支払いがない場合は財産が差し押さえられます。さらに今回の改正により「緊急代執行」が加わります。除却等の緊急性が高い空家については、「命令」等の事前手続きなしに「代執行」が可能となります。除却費用は通常通り所有者に請求され、支払いがない場合は財産差し押さえです。

 今回の改正により、「管理不全空家」「特定空家」に対してかなりの厳しいものとなっています。そうならないための対策が今後のカギと言えます。

 

3、「管理不全空家」「特定空家」にしないための対策

空家の多くは、親の死亡により(相続人が利用しない)自宅を相続することで発生するケースが殆どです。

この場合の空家対策は「譲渡貸家維持管理」のつです。以下、これについてご説明します。

①譲渡

使わない不動産を持っていても固定資産税等の維持費は発生しますし、建物は劣化し続けます。土地は時期により価格変動しますが、価格変動そのものがリスクとも考えられます。売却して換金するというのは単純かつ有効な対策と言えます。

尚、譲渡の際に利益が発生すると、利益に対して原則として20~39%の譲渡所得税が発生します。ただし、相続発生から3年以内に空家を売約した場合は「空家の3000万円特別控除※」という税額軽減措置があります。この特例は、税制面でも空家対策を後押しする姿勢を示したものとなっています。

※空家の3000万円特別控除

こちらの特例は、上記の3年以内ルール以外にも途中で貸し付けてはいけない等の細かい適用要件がありますのでご注意ください。要件の一つとして、耐震基準を満たしていない建物の場合は、耐震リフォームもしくは取り壊して更地にするというものがあります。以前は、リフォーム・取壊しは売却側で行う事が要件でしたが、令和5年改正により買取側でリフォーム・取壊しを行う場合も特例適用可となりました。上記以外の詳細な適用要件については、今回は割愛させていただきます。

貸付

住宅として需要があれば、そのまま貸し付けて家賃収入を得るという方法です。また昨今は古民家ブームやオンライン業務の浸透により、不動産の需要は多様化の傾向です。需要が見込めるのであればリフォームして店舗や事務所として貸し出す事も考えられます。

所有する空家について一度利用方法を検討してみるのもいいかもしれません。

③維持管理

シンプルに定期的に空家に通って清掃等の維持管理を継続する方法です。業者等に有料でお願いする方法もあります。ある程度、時間的経済的に余裕がないと厳しいので、あまりお勧めはしません。「特定空家」になる前に取り壊すという方法もあります。しかし、その場合は住宅用地でなくなるため固定資産税は上述の通り増加することになります。

 

4、空き家対策のための大前提 ⇒ 相続で揉めない!!

売却価値や利用価値がどんな高い不動産でも、共有問題があると台無しです。

遺言の存在しない相続においては、遺産分割協議が終了するまでは全ての財産が法定相続分で共有状態となります。様々な事情で遺産分割が成立せず時間だけが経過するうちに空家は「特定空家」認定。行政命令処分が下っても、相続人同士で押し付け合い事態はさらに泥沼化。最悪です。

相続争いは一度揉めると修復は極めて困難です。揉めないためには遺言が一番です。

当事務所は、遺言の作成を強く推奨しております。(せめて不動産だけでも。)

日本の人口動向からみて、空家問題が増加していく事は自明の理です。そしてこの問題は、日本人であれば誰もが直面する可能性が高いと言えます。空家問題は、行政だけでなく我々一人一人が自身の問題として取組んでいく姿勢こそが重要だと強く感じます。

 

5、未来の暮らしは、一人一人のやる気と工夫次第!

色々と暗い話を続けてきましたが、私は空家問題について「ピンチはチャンス」と捉えています。次々と空き家が増えていく様は、一つの時代の終焉とも見受けられ少し寂しくもあります。しかし、一方で新たな暮らし新たな街づくりのスタート地点であるとも考えられます。

今こそ国や企業そして我々一人一人が連携して、明るい未来を創造していくチャンスの場に立たされているのかもしれません。

 

 

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筆者紹介

山方越志税理士事務所 
山方越志

初めまして。税理士の山方と申します。
私は、これまで相続税の申告に50件近く携わらせ頂いてます。 相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。これは、税理士としても相当な案件数と自負しているところです。
相続実務においては、相続税の知識はもちろんの事、周辺税法・民法・社会保険料及び不動産といった様々な知識からの多角的な検討が必要となります。
その中でも、とりわけ重要なのはご家族皆さんのお気持ちの部分だと、仕事のたびいつも痛感させられます。

節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

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