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死亡退職金は相続財産か(死亡退職金は誰が受け取れるのか)

2024.02.20

一、序論

1、退職金のある会社では、社員が亡くなると配偶者などの家族に死亡退職金が支給されます。公務員や大企業等では勤続年数が長ければ長いほど死亡退職金は高額となり、定年間近で被相続人が死亡した時には死亡退職金は数千万円になる場合も珍しくありません。

2、また、会社の役員の場合も、役員が死亡した場合に、会社に定款の規程或いは株主総会の決議があれば、死亡退職慰労金を支給することができます。被相続人が創業者等で長年社長をしていた場合、数億円或いは数千万円の高額な死亡退職慰労金が支給される場合もよくあります。

3、これらの死亡退職金は相続財産として法定相続人が法定相続分に基づいて受け取るのでしょうか。
 それとも、生命保険の受取人のように、死亡退職金は相続財産ではなく、固有権で配偶者などが全て受け取ることができるのかが問題となります。

 

二、死亡退職金の種類

 死亡退職金の種類としては、①死亡退職金(民間企業の従業員が死亡したときに支払われるもの)、②死亡退職慰労金(民間企業の役員が死亡したときに支払われるもの)、③死亡退職手当(公務員が死亡したときに支払われるもの)があります。

 

三、死亡退職金は相続財産か

 死亡退職金が相続財産になるかどうか、死亡退職金が法律・条例・規程等で定めがある場合とない場合とで分けて検討をします。

1、法律・条例・規程等で受取人の定めがある場合

(1)公務員の死亡退職手当

 国家公務員の公務員退職手当法、地方公務員の条例のように、法律・条例で死亡退職手当の受取人が定められている場合は、死亡退職手当は、相続財産にならず、法律・条例の定めに従った受取人が全額受け取れる(最高裁昭和58年10月14日判決)。

 よって、例えば、法律・条例で死亡退職手当の第1順位が配偶者とされている場合は、法定相続人が妻1名(法定相続分2分の1)、長男1名、長女1名(法定相続分各4分の1)がいた場合でも、3000万円の死亡退職手当は妻が1500万円、長男・長女が各750万円を受領するのではなく、第1順位の妻が3000万円全額を受け取ることができます。

 

(2)民間の従業員の死亡退職金

 民間企業の従業員の場合も就業規則で死亡退職金の支給規程等があれば、死亡退職金は相続財産ではなく、その規程に従い受取人が全額受け取れる(最高裁昭和60年1月31日判決)。同規程の場合も第1順位は配偶者とされている場合が多いので、配偶者がいる場合は配偶者が全額受け取ることができます。

 

(3)民間の役員の死亡退職慰労金

 民間の役員の死亡退職慰労金の場合も役員の死亡退職慰労金の規程がある場合は、その規程に従って死亡退職慰労金を受け取ることができます(この場合も第1順位は配偶者とされている場合が多いです)。

 

2、規程の定めがない場合

 死亡退職金について、死亡退職金規程等がない場合に、死亡退職金が相続財産となるのか、相続財産とならずに固有権として妻などが全額受け取れることができるかについては議論が分かれています。

 しかし、会社等に死亡退職金の規程がない場合に、役員の死亡後、会社が当該役員の遺族の1人に対して支給する旨の決議をしたときは、当該退職金は、原則、相続財産ではなく、当該相続人個人に全額支給されたと解する判例などもあり(最高裁昭和62年3月3日判決)、規程の定めがない場合でも相続財産にならないと考える見解も有力です。

 

四、相続放棄をしても、死亡退職金を受け取れるか

 被相続人などに借金があり遺族が相続放棄をした場合は、相続人は相続財産を取得することはできません。

 ただ、相続放棄をしても、相続財産でない固有権である生命保険金などは受け取ることができます。

 死亡退職金も、相続財産でないとなれば、相続放棄をしても、会社等に対して固有権として死亡退職金を請求することができます。

 公務員、会社の従業員は、法律・条例・就業規則等の退職金規程がある場合は妻など家族が規程等に基づいて退職金を請求できますが、役員死亡退職慰労金は定款で規程がない限りは株主総会の決議がなければ死亡退職慰労金を請求することはできません。

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筆者紹介

柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。

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